1500年代 近世 宗教改革の陰で息づくタロット

時代区分の整理

時代区分 世界 日本
古代 ancient 5~6世紀まで 飛鳥~平安中期
中世 mediaval 7~9世紀から13~14世紀 平安時代~
近世

early modern

宗教改革・大航海時代、商業革命あたり(15~16世紀前半)から、市民革命・産業革命前期あたり(18世紀後半~19世紀初頭)まで 安土桃山時代と江戸時代をあわせて近世とする説が一般的
近代 modern 19世紀~ 明治時代~
現代 第二次世界大戦以降

1500年代ヨーロッパは戦乱の世にあり、戦いに明け暮れる諸侯・君主と、彼らと結託し、本来の役割を果たさず金の猛じゃ的な体たらくを帯びるキリスト教会に対して各地で改革の声が上がりました。

1517年 ドイツ、ルターが95箇条の意見書を発表

  • マルティン・ルター(1483~1546):キリスト教会に対する95箇条の意見書を発表

ルターを契機に、スイス、フランス、イギリスへと激しい抗議運動が広がり、その後約30年のときの流れとともに新しい宗教観がヨーロッパのすみずみにもたらされました。

当時は、新聞や書物など活字の印刷物は普及していましたが、当時の庶民の大部分は読み書きができなかったため、彼らにもわかるように版画による挿絵や図版を多用した読み物が量産され出した時代でもありました。

木版画を読む 山川出版よりp.82 図2「予言の書」より

ヨハネス・リヒテンベルガー作 1527年

図の中央にイエス、左側に聖職者たち、右側に皇帝と貴族たち、下方に農民が描かれ、教皇は祈り、皇帝は保護し、世俗の人は働くことで厄災を取り除かれることが説かれている。

宗教改革が成功に導かれた大きな要因のひとつに、ルターをはじめとする思想家たちが木版画の印刷物を活用したことが上げられています。

七つの頭を持つ教皇獣

よく見ると絵柄の下のカリグラフィも美しい!

 

 

改革=衰退するキリスト教と高揚するオカルティズム

オカルト/Occult:隠秘

占星術・魔術・錬金術を含む異教、密儀宗教、精神世界の総称。日本語は「隠秘」があてられる。「隠された世界の神秘」を扱う分野の総称。一般社会には公にならないよう秘密の教義として守られる分野。「現実、日常」とは一線を画する目には見えない不可視の世界、宗教、心霊、超常現象、魔術、占星術、ヨガなども含むとする場合もある。非科学的な世界、精神世界と呼ばれる領域のなかでも、より現実を超越した領域を指す傾向。


 

下)木版画を読む 山川出版より P.57 図3

「天空における不可思議な会合について」ゼバスティアン・ブラント作1503年)

1504年に蟹座で起こる土星、木星、火星の合が擬人化されて描かれ、韻文がそえられている。

 

オカルト文化の流行は中世期においてすでに宮廷内で発生していたものでしょう。文化というものはすべて、宮廷から庶民へと、派生していくものと言う時代でした。また中世期にはフリーメイソンも発足していますね、あ、一応わたしもメイソンリーに加入しておりますが!

この時代の人物として、抑えておきたいのがこちらの人々!

パラケルスス:

1493年1541年9月24日(満47歳没)国籍スイス

フェラーラ大学卒。医師、化学者、錬金術師、神秘思想家。

錬金術(化学)の医療への利用、水銀など鉱物薬の利用、三原質(水銀、硫黄、塩)の再発見・四元素説の新解釈など大きな功績を果たした存在。

 

 

博愛主義団体フリーメイソン:

正式名称フリーメイソンリー(会員個人をメイソンと呼ぶ maison=石工):

中世期より活動を続けている、自由、友愛、平等の三精神を基本原理とする博愛主義団体。現在でも世界各地で「神性の追究、内的探求」をテーマに集いが開催されており、「精神世界の探求者」集団であると解釈できるでしょう。タロットにかかわる多くの研究家が関係してもいます。

フリーメイソンリーの前身が、石工の組合だという説があるが確証はない。その教義が体系化された図版には、タロットの絵札に登場するシンボルと多くの重なりを見ることができます。


オカルトの教えがオカルティズムであり、占星術、錬金術、魔術を主流とする精神世界の中の一派、神がかり的な超常現象を含む言わば怪しい文化、サブカルチャーが熱を帯び、この層でタロットが発達したこともまた事実でしょう。

コア層ながらも根強く支持され現在に至っており、現在では、オカルトというカテゴリーを冷静客観的に扱いつつその思考をどう現代社会に生かせるかと言う観点からタロット、占術研究がなされているところでしょう。


錬金術

化学変化を用いて物質を混合・精製しながら金に変えようとする金属変成術で、古代エジプトの魔術にその伝統を見出されることもありましたが、多くは人間の精神の変成が主題となった

金を生成する触媒となる物質は「賢者の石」と呼ばれ、寓意画の中で赤い獅子などで描かれる。


 

下)1550年の錬金術書「哲学者の薔薇園」より

ウロボロスの竜の上に立つ両性具有者は、男女が一体化し完全な存在へと変成を果たした人間のシンボル。背後に赤獅子と賢者の石を砕くペリカンが見られる。

 

特にタロットの図像は、錬金術的であるとも言われてきましたが・・・やはりドンピシャではありませんね。

活版印刷&木版画による作品としてのマルセイユ・タロットの量産化も熱を帯び、1600年代中期の作品あたりのものから、今でも美術館にて保存されている作品を観ることができるようになりました。

現存する最古の木版画タロットが、ノブレのマルセイユ・タロットです。

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